「彼岸過迄」は「朝日新聞」上に明治45年1月から4月まで連載され、大正1年に春陽堂から単行本が刊行されました。こちらはその単行本の復刻版です。
漱石後期三部作のうち、「行人」「こころ」へと続く1作目に当たる作品です。漱石が初めて短編を重ねて長編小説を構成する技法を採用した長編小説としても知られています。内向的な男と行動的な女、いわゆる「恐れる男」と「恐れない女」の恋愛模様を主軸に描いた内容です。
巻頭の献辞には「此書を/亡児雛子と/亡友三山の/霊に捧ぐ」と綴られています。前者の「雛子」は「彼岸過迄」連載前年に急死した漱石の五女。漱石は愛児の死に際し非常な衝撃を受けます。本作中「雨の降る日」はこの出来事に取材して書かれ、子を失った漱石の悲しみが登場人物を通して語られています。後者の「三山」は朝日新聞社の主筆を歴任し漱石を朝日新聞に招いた池辺三山のこと。三山は「朝日文芸欄」の廃止等を機に明治44年に朝日新聞を退社(漱石も三山に殉じて辞表を出したが慰留された)、その翌年、本作連載中に急死しています。タイトルである「彼岸過迄」は「新聞連載を元旦から始めて、彼岸過ぎまで書く予定」だからと漱石自身が語ったそうですが、上述の二人の死に対する弔いの思いが「お彼岸」という死者への供養の季節とリンクしているようにも感じられます。
装丁デザインは橋口五葉によるもの。表紙・裏表紙には一本の木の下にいるインド風の女性と上下に十二支が描かれています。非常に美しいデザインですが、漱石としては死者へ捧げた作品の表紙としては華美に過ぎると映ったのかあまり気に入っていなかったようです。
■商品詳細
タイトル :彼岸過迄(春陽堂版)
(名著復刻 漱石文学館)
著者 :夏目漱石
編集発行 :日本近代文学館
初版発行 :大正3年5月25日印刷
大正3年5月26日発行
復刻版発行 :昭和54年7月20日印刷
昭和54年8月1日発行
(第3刷)
サイズ :約150×225mm ハードカバー
付属品 :函、輸送用保護函
状態 :経年のスレ・ヤケ・シミあり
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