「行人」は大正元年12月から途中胃潰瘍が発病し連載を中絶、その後再開、大正2年11月に連載終了しています。単行本は大倉書店から大正3年に刊行、こちらはその単行本の復刻版です。
学問を生きがいとしてきた兄・一郎は、妻の愛を疑い、弟の二郎に「直の貞操をお前に試してもらいたいのだ」と頼む。すれ違う夫婦間の愛情、巻き込まれる弟、自身の苦悩を弟に吐露する兄が描かれます。「死ぬか、気が違ふか、夫でなければ宗教に入るか。僕の前途には此三つのものしかない」とまで思い詰めるほど孤独と不安に陥る一郎。漱石作品の主題ともいえる個人の内面と外部社会との不接続がより深化されている作品とも言えるでしょう。これは病の深刻化という身体的な苦しみも加わった、孤独と不安に苦しむ漱石の姿なのかもしれません。
本書の装丁は橋口五葉によるもの。漱石本の装丁の多くはこの橋口五葉が手がけており、『我輩ハ猫デアル』から『行人』までの6作を手掛けています。橋口は漱石以外にも、森田草平、鈴木三重吉、森鷗外、永井荷風、谷崎潤一郎、泉鏡花の作品の装幀を手がけており、装丁家としても名高い人物でした。
■商品詳細
タイトル :行人(大倉書店版)
著者 :夏目漱石
編集発行 :日本近代文学館
初版発行 :大正3年1月1日印刷
大正3年1月7日発行
復刻版発行 :昭和54年7月20日印刷
昭和54年8月1日発行(第3刷)
サイズ :約155×230mm
付属品 :函、輸送用保護箱
状態 :経年のスレ・ヤケ・シミあり
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